公共交通の活用事例:サンフランシスコ編

 

 サンフランシスコは西海岸の美しい港湾都市として、日本人にも親しみ深いまちである。「大都市」というイメージがあるが、その中心部は東京23区の1/5程度と狭く、また、サンフランシスコ湾によってオークランドなどの周辺都市と分断されているため、車利用の限界が早くから認識され、公共交通 の利用が推進されてきた街である。

 

 

 サンフランシスコにおけるTDM(交通需要マネージメント)の方針として上げられるのが「トランジットファースト政策」である。車の流入抑制、駐車場供給量 の制限。公共交通および歩行ネットワークの構築などが盛り込まれている。こうした努力を通 じて、現在通勤者の20%が公共交通を利用するようになっているとのことである。

 

 

上写真・フィッシャマンズワーフの背景にダウンタウンの高層ビルが見える。

左写真・奥に見えているのが、かのゴールデンゲートブリッジ。巨大な橋であるが、どうしてもボトルネックとなり、橋へ至る道路はかなり手前から渋滞している。 

 

 湾岸部の脚として建設されたバート(BART: Bay Area Rapid Transit)はダウンタウンからコルマ、フリーモント、ノースコンコルド、リッチモンドへ向かう4路線が運行されている。互いに中心部交差するような路線になっているので、ダウンタンでは本数が非常に多いが、乗り間違えると、とんでもない方向へ行ってしまう。
 中心部では地下駅、郊外では高架駅となる。地下駅ではホームの一部を吹き抜けとしたり、また、コンコースに地上の光が取り入れられるような設計となっており、車両や、その他の設備とも相まって、全体的に「先進的」で「明るい」雰囲気がする路線である。

 
   車両内部。天井はそれほど高くないが、窓が大きく、開放的なデザイン。車両内の椅子の下に支持脚がないのが、どことなく未来的な印象だ。各入り口付近が対面 席となっており、車椅子や自転車持ち込み旅客に対応している。
   車両内のデザインで最も評価したいのがこの大きな路線図。横幅は1メートル、駅名の文字も10mm程度あり、反対側の席に座っても充分に判読できる。日本ではこうしたスペースを広告が独占し、路線案内は天井に追いやられてしまっているが、まずはパブリックな情報を優先してもらいたいところだ。
 

 バートでは車両、駅舎、設備等について様々な先進的な取り組みが成された。券売機も他のサインとデザインを統一、ステンレス製パネルを壁に埋め込むというスマートなデザインとなっている。しかし、特注であるため紙幣の種類が増えたことに内部の機械が対応できず、シールがベタベタ貼られている状況に陥っている。

 旅行者にはそもそもバートの乗車システムがよくわからない、すぐ横にはMUNIの地下鉄があり、両者の区別 がつきにくい、おつりが出ない、20ドル札を受け付けない・・などなど。ここらあたりは根本的な改善が必要と思われた。

 
 

 ダウンタウンを東西に貫通する マーケットストリート。両側には百貨店や有名店が並ぶ。トラムやバスが駅や道路を共有し、まるでトランジットモールのようであるが、マイカーがかなり流入しているため、朝夕には渋滞し、定時運行とはほど遠い状態となっている。こうした状況が改善されると、もっと利用者が増えるのではと思われた。

 

 停留所に設置された昇降装置。トラムはビンテージ車両が使われ、車椅子対応にはなっていないが、各駅にこのような昇降機が置かれ、これと車両の間にパネルを渡し、乗降している。乗降にはかなりの時間がかかるが、乗客はおとなしく待っており、不満そうな表情を浮かべる人もまず見かけなかった。

 

 ミュニバスはトロリーとエンジン型が併用される。料金は1ドル(100円余り)と今回訪れた西海岸の都市では一番安い。また、他の都市では実施していない1日券、3日券、7日券が格安で提供され、有料ながらバス路線マップも案内書などで手に入れることができる。路線によっては24時間運行されているものもあり、旅行者にとっても使い易い公共交通 になっている。

 ビンテージトラムは様々な車両が走行しており、そのデザインを見ているだけでも楽しい。

 
 マーケットストリート、パウエル駅はケーブルカーの始発駅にもなっており、終日観光客らで賑わっている。充分な広さが確保された歩道では様々なパフォーマンスが繰り広げられ、道行く人を楽しませている。  
 

 2階建てバスを使ったグレイラインツアーバス。こちらは完全に観光用、市内観光他8コースがある。    サンフランシスコ名物のケーブルカー。特等席は身を乗り出すステップ席。しっかりバーを握っていないと、急停車で振り落とされそうになる。
 
 

 マーケットストリートで地下を走っていたミュニトラムは郊外では地上を走る。車両はイタリア製のモダンなもの、窓の開口部も大きく取られている。一般 道で車と並ぶと流石に大きな感じ。車椅子には停留所に設置したスロープなどで対応している。

 写真左・出入り口横の斜めバーを押し下げることでドアが開く。ボーっと立っているといつまでたっても開かない。

 

 

 

以上 サンフランシスコの促進策をまとめると

  1. ダウンタウンと郊外がサンフランシスコ湾で分断されるといった地理的条件等から、早くから脱・車社会への取り組みが成された
  2. トランジットファーストでは以下の政策を実施
    • 高速道路容量の凍結
    • 駐車場供給量の抑制
    • ダウンタウンを中心に歩道ネットワーを整備
    • 公共交通の活性化
    • 交通管理プログラムの実施
  3. 都市内部のミュニ、湾岸都市部を結ぶバート、サンホセなど南部都市を結ぶカルトレインなど、様々な公共交通 を組み合わすことで総合的な交通体系を構築している。

早くから公共交通に力を入れているサンフランシスコであるが、バス車両や停留所の管理状態は決していいとは言えない。また、バートの駅務設備も利用しやすいものとするには全面 的な改修が必要かと思われた。加えて、ミュニとバートの共通乗車券なども検討されるべきだろう。

 

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