公共交通の活用事例:ポートランド編

 

 シアトルから南へ、飛行機なら50分ほでの距離にあるのがポートランド。今、「全米で最も暮らしやすいまち」という評価を受けている。なんだか富山自慢と似ている・・。産業は農業中心であったが、近年はインテルなどのハイテク産業の誘致に成功、また、ナイキ発祥の地としても知られている。そして、ポートランドは決まっていた高速道路の計画を中止し、その資金でLRTを建設、大成功を治めた都市として注目されている。実際、交通 局にあたるTRI-METで伺っても、時刻表の印刷枚数など、細かい点にまで全米から問い合わせがあるそうだ。

   

 典型的な郊外拠点。ガソリンスタンド、スーパーマーケット、レストランなどが軒を並べる「道路型商店街」といった感じ。日常の買い物はほとんどここで足りてしまうので、わざわざ渋滞に耐えてまで、中心市街地へ出かける必要がない。

 

 

 ポートランドの象徴でもあるウィラメット川を渡った対岸にあるSC「ロイドセンター」。百貨店からスケートリンク、レース場から映画館となんでもあり。一通 りお店をまわるだけでも半日かかるような規模。しかし、入居する店舗はどこも同じで旅人としてはすぐに飽きてくる。それでも、生活者にとってこの魅力はやはり捨てがたく、地元の人は日常的に利用している。 LRT「MAX」はダウンタウンとこのロイドセンターがまず結ばれた。二つの核が結ばれ、互いの魅力を保管するような関係がつくられたのが、成功の要因のひとつだろう。
 高岡と新湊。それぞれの個性をうまく引き出したいところだ。


 

 

 
さて、いよいよMAX搭乗。
 

 街の中心部を走るMAX。周辺は一階部分の50%以上を商業施設とし、ショーウンドを設けることを義務づけられ、それ以上の貢献をするとボーナスが与えられるシステムっとなっている。また、通 りには噴水やアートが配置され、街路樹がつくり出す木陰も気持ちいい。これなら「歩いてみたい!」と思わせる環境がつくられている。

 しかも、中心部一帯はすべて無料。ワンブロックだけでも気軽に乗れるので、こんな便利な乗り物はない。都市に設置された水平方向のエレベーターという感じである。

 

 MAXが東西方向に走るのに対し、南北方向を中心に走るのがバスである。バスの走る通 りもトランジットモールとなっており、不要なマイカー交通がないので、渋滞知らずである。バスはダウンタウンから周辺7つのエリアに向けて走るが、すべてのバスがこのトランジットを経由するので、ここにさえくればどこへでも行けるようになっている。

 7つのエリアにはそれぞれシンボルと色が付けられており、はじめて乗車する旅行者にもわかりやすいようになっている。案内書には時刻表や路線図などが用意され、日本語の乗車案内まであるなど至れり尽くせりである。

 
 

     
さて、こちらは郊外のパークアンドライド施設
 

 トラムのホームとバス乗り場が隣り合っており、乗り換えが実にスムース。駐車場は写 真奥という位置関係。

 トラムが到着する時刻になると、いつの間にかバスが揃っている。完全に時間調整している模様。

 トラムもバスも早朝から深夜まで運行、路線によっては2時間ほどしか休まないが、一方、1時間に1本などという路線もある。

 

 

 自転車置き場と「バイクラック」。自転車利用者の着替えや荷物などを一時的に保管することができる。利用は申し込み制。

 自転車用施設ではこのほかにシェル型のカバー付き自転車置き場がある。自転車をすっかり覆う形で雨やイタズラからバイクを守る。

 

 こちらはまた別のトランジットセンター。バス停が円弧上にレイアウトされているが、注目すべきは扇の骨のように、それぞれのバス停への小道がつくられていること。最短コースが確保されているなんて、歩行者には嬉しい。

 路線案内によるとここは「パーキング」ではなく「ガレージ」となっている。両者の違いは青空駐車と屋根のある立体駐車場の違いであった。

 
 MAXの車内。車両は通 常の床が高いタイプ2両と低床式2両を組み合わせた編成になっており、こちらは通 常車両。ラッシュ時になるとかなりの混雑となり、自転車乗車はちょっと迷惑な感じ。    こちらは低床式車両のドア部分。約30cmあるプラットホームがない場合に使われるステップ。ホームがあるとまったくフラットになり、車椅子も直接乗車している。
 

 ダウンタウンのヘソ「パイオニアスクエア」。駐車場を取り壊し、市民が寄付した煉瓦によってつくられた。訪れた日曜日にはイタリアンフェアが開催されていたが、大盛り上がり、縁もゆかりもない旅人でさえ、そこにいるだけで楽しくなるほどだった。

 

 イタリアンフェアの中で開催されていた人形劇。「オ〜ソレミヨ〜〜」の熱演に観客からは盛んな拍手が送られていた。RACDAで開催した「幻のパペッティア」を思い出すなぁ・・。

 

以上 ポートランドでの促進策をまとめると

  1. 決まっていた高速道路の建設計画を中止、又は縮小し、その予算をうまく転用してMAXや公園を建設、大成功を治めている
  2. バス路線、および運行本数の整備・・・深夜3時半まで運行 ・中心エリアは無料、乗り換えなどにも時間内は追加料金なし
  3. 中心部はトランジットモールとして整備され、商業と交通 がうまく融合している
  4. シアトル同様、HOVレーン、相乗り乗車システムが導入され、各所にパークアンドライド設備があり、無料で駐車してバスに乗り換えられる
  5. GISを利用したリアルタイムバスロケーションシステムが確立し、一部の情報がバス停で表示されている
  6. オレゴン州法に基づいて、企業に公共交通による通勤を要請、企業が一括して定期券を購入して、従業員に配布している
  7. 高齢者、障害者は50セントの割引均一料金
  8. 自転車の持ち込みができるほか、自転車を乗り換える際に荷物などを保管できるロッカーが用意される
  9. 通常の車高のバスでもリフトが簡単に出てくる仕掛けとなっており、車椅子等の利用も日常的に行われている
  10. ビンテージトラムが走っている
  11. MAXの延伸計画が3路線で進んでいる
  12. 建設計画に関しては住民が積極的に参加できるしくみがつくられている。広報活動も積極的で6万人を対象に年、1,2回の広報誌を送っている。

Metoroというとすぐに地下鉄を連想してしまうが、これはMetropolitan=住民の・・という意味。ポートランドでも街の開発に対して、市民が中心となった自治政府のような組織「Metro」をつくり、これが議会で承認されて以後のLRTなどの計画が実施されている。住民が自らの街の将来を考え行動する・・この点において100年は遅れているような気になってしまった。

 

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