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富山県ナチュラリスト協会会長  泉 治夫さん
『二上山の帰化植物』
講演録

 泉でございます。さっそく二上山の帰化植物ということで、しばらくお話したいと思います。スライドショーを用意してきましたので、みなさんのお手元にありますパンフレット−今日は座席がちょっと暗いかと思いますので、絵のほうで見ていっていただきたいと思います。

 最初の画面に映っておりますのはヒメジョオン。全国どこへ行っても非常によく目にする植物で、大繁殖をしております。北米原産ですけれども、幕末から明治の初めにかけて既に日本へ入ってきっている植物です。キクの仲間です。
帰化植物というのは一体どういうふうに定義されているかということなんですけれども、日本みたいな、まわりが海に取り囲まれておる国にとっては非常にわかりやすいわけですね。というのは、本来の生えている場所から他の地域へと−日本の場合は必ず海を越えてこなければならない。いわゆるヨーロッパやアメリカのように陸続きではありませんので、帰化という概念が非常に明確になるわけです。そしてそれが人間の力によって知らないうちに−あるいは知っていてわざわざという場合もあります−入ってきた。それがしかも、入ってきたその先で、野生状態で繁殖しているということなんですね。

 もうひとつ大事な条件があります。たとえばイネだって帰化植物じゃないか、と。もともと日本にあったわけじゃございません。しかし、そういうふうにして栽培されているもの、あるいは人間の管理の下に置かれているもの、こういうのは帰化植物とは言わないんです。

 

キクイモ

 それからもうひとつ、渡来の時期がはっきりしている。ということは、文献になんらかの記載があるということでもあるわけですけれども。たんぼ、畑にたくさんの雑草がありますね。たとえば、カタバミであるとか、オオバコであるとか。こういうようなものは、もう既に弥生時代ぐらいに稲作あるいは畑作農業と一緒に大陸から入ってきているわけで、そういうものも広い意味では帰化植物なんですけども、こういうものは−ちょっと下のほうに書いておきましたけれども−いわゆる「史前帰化」と言いまして、ちょっと別扱いしております。ですから私がこれからお話するのは江戸時代以降、いわゆる狭い厳密な意味での帰化植物ということになります。たとえば、キクイモ−最近このイモが糖尿病にいいと言って、大変評判になっておりますけれども−これも渡来の時期がほぼはっきりしています。幕末、イギリスの全権大使でオールコックという人がいましたけども、これが江戸の高輪の東禅寺というお寺におりまして、お寺の境内にこれを持ってきて植えまして、イモを採り安藤対馬守に試食させたという記録があります。ですから、もう幕末に入っているわけです。

 次に、ここに4つほど例あげました。幕末から明治の初めに入っている、上はフランスギク。フランスとついているからにはもちろん、ヨーロッパ原産です。マーガレットとよく間違われます。オオケタデはインド・中国原産です。ムシトリナデシコ、これもヨーロッパ原産です。アメリカヤマゴボウ、これは北米原産です。これらは大体もともとは栽培目的で入ってきたらしいですけども、現在は日本のあちこちで野生状態で見られます。

 その次に、明治の中頃から大正時代にかけて入ってきたものです。これはユウゲショウと言いますけれども、マツヨイグサの仲間で非常に小さいものです。これももともとはどうも栽培・観賞用として入ってきたものが野生化しているみたいです。

 

オオハンゴンソウ
オオハンゴンソウ

 オオハンゴンソウは北米原産です。最近はわりと少なくなったんですけども、一時期、富山県でも、畑のすみっこであるとか、いろんなところに大繁殖した時期があります。五色沼あたりにも大繁殖しているわけですね。あそこの自然保護関係の人と、「せっかくの五色沼が外国産の花でどこ行っても景観をだめにしとるがでないか」と、話しましたら、「うん、そこで困っとるんだ」というようなことも言っておられました。

 それから、オオキンケイギクと言います。これも非常にきれいですから、おそらくもともとは栽培目的で入ったんだろうと思われます。

 それからハルジョオン、これはさきほどのヒメジョオンよりもちょっと時期が早い、4月に咲きます。これも北米原産です。ヒメジョオンもハルジョオンも、いわゆる明治期に入りまして、当時日本は至る所、鉄道を全国に敷設していった先々に、いわゆる鉄道沿線に増えていったものですから、「鉄道草」と言ったり、あるいは「ご維新草」と当時の人が言っております。

 その次ですが、これ、割と新しい帰化植物の例です。

アカバナルリハコベ
アカバナルリハコベ

 こっちのほうはアカバナルリハコベと言います。私が初めてこれを富山県内で見たのは1992年ですけれども、新湊の「新港の森」の道端にほんのわずか生えていたのを見つけました。そして「え?これひょっとして富山県で最初でないかな」と思いまして、富山市科学文化センターに問い合わせたところ、ファミリーパークで2年前に記録されておりまして、ちょっとがくっときました。とにかく富山県に入ったのは、もう、17年ほど前でしょうかね、非常に新しいわけです。ルリハコベと名前が付いておりますけれども、瑠璃色ではなくてわざわざアカバナと、なんか矛盾した名前が付いています。ハコベの仲間で非常に小さく、直径が1センチあるかないかほどです。小説に「紅はこべ」というのがありますけども、これのことだと言われております。これを昨年、久しぶりに見つけました。島尾海岸の砂の上に生えていたのでびっくりしました。

 それからこっちのほうはアメリカアサガオと言います。これは私の住んでいる家の近くの道端で見つけました。変わったアサガオが生えているなと思いまして近寄ってみますと、栽培している朝顔とはちょっと違うなということで、え?と思ったんです。熱帯アメリカ原産で、食料と一緒に入ってきております。食料というのは、何であるかはっきりしませんけれども、大麦、小麦、あるいはトウモロコシ、そういったようなものの中に種が混じって入り込んできたらしいんですね。けっこうきれいな花が咲きます。

 それからこちらのほうは、ベニバナボロギクと言います。アフリカ原産です。これは二上山にはあちこちに生えています。非常におもしろいのは、生えてる場所が、数年経つと移すんですね。だから、2〜3年後にそこへ行ってみても、無いんですね。帰化植物の中にはたまにそういうのがあります。長くそこに生えているものと、やがて消えていってしまって別の場所に生えてくるものというのがあります。葉っぱなんかは山菜として優れたものです。

イガオナモミ
イガオナモミ

 それから帰化植物がその場所にどういうふうにして定着していくのかということです。これはオナモミの種ですけれども、棘がありましてね。これが動物の体、あるいは人間の靴やズボン、衣服などにくっついてくるんです。あるいは外国から入ってくる、穀物を入れるための麻袋であるとか、いろんなものにくっついている。入ってくるチャンスを狙っているわけです。こちらは氷見線のSLですけども、記念の走行で撮った写真です。そういう鉄道あるいは道路沿いの貨物にくっついて入ってくる。あるいは牧草として入ってくる。いろんな入ってくる条件とルートがあるわけです。人間が何らかの形で知らないうちに持ち込んでいるみたいです。

 それから在来の植物との競争に負けないということが非常に重要です。入ってきても、そこにもともとある植物と競争しなければならないわけです。負けてしまっては、消えていってしまうわけです。

 それから適当な環境条件がある。もともと生えていた場所と、入ってきた場所と、条件が似通っているということです。気候とか土壌など、いろんな条件がございます。これは、前の写真で見ましたオオオナモミに対して、イガオナモミと言って、実がかなり大型のものです。これを私が最初に見つけたのは伏木の一宮です。今からちょうど28年前です。それからしばらく富山県内で見なかったんですけれども、去年の秋に久々に、雨晴の海岸の女岩の対岸の砂の上で生えているのを見て、びっくりしました。これも全国的にはびこっているようです。非常に鋭い棘が出て、棘の先端がちょっとカギ型に曲がっているんですね。だから衣服にくっついたりすると簡単にとれない。遠くへ分布を広げていくということになります。

 その次は帰化植物の特性です。一年生植物が多い、それから発芽後、急速に成長する。これは在来植物と競争する上で非常に有利な条件です。それからたくさんの種を作る。環境のちょっとした変化ぐらいには負けない。あるいは日なたの植物が多い。だから帰化植物が入り込んでくるのは森の中ではなくて、人間が壊したような場所、明るい場所なんですね。それから一般に栄養分のある場所、たとえば畑、田んぼ、あるいはゴミ捨て場、養鶏場の飼料を置いてあるような場所の近く。それから寿命が長い。種の寿命が長い。種を作る期間が長い。たとえばセイヨウタンポポは、先日二上山へ登ったら、2月のはじめでしたけれども、もう咲いているわけですね。それから秋は11〜12月までぐらいでも咲いているわけです。一年中、繁殖能力があるわけです。たくさんの種を飛ばします。

 これはコバンソウという、ヨーロッパの帰化植物です。雨晴海岸にはたくさん生えています。まず海岸みたいなところに入り込みました。ところが最近は道路沿い、それから万葉ライン沿いにも山登りをして入ってきております。

 その次は、帰化植物はどうして戦後、急に増えたのかということです。最初に挙げられるのは、戦後急に貿易量が増えた。それから人的な交流も増えた。特に帰化植物の中には北米原産が非常に多いんですね。私がいま紹介しているいろんなものも、北米原産が非常に多いわけです。特に1960年代の高度経済成長期以降、急激に増えたんです。そのひとつは都市、あるいは住宅地、工場用地がどんどん拡大されていった。道路建設、山林開発、海岸の埋め立て、あるいは観光開発。山にも各地にいろんな道路を付けたり観光開発をしたりリゾート地を作ったり、ゴルフ場を建設したり、、入りやすい条件を作っていきました。それから農業政策によって農地がどんどん捨てられ、あるいは休耕田化していったりしますと、そういうところへまず、入り込んでくるわけです。条件が整えられたと言えるわけです。

 これは二上万葉ラインです。こっちのほうは伏木港ですけども、船が荷揚げすると、荷物に交じってくるわけです。ですから港周辺というのは帰化植物を観察するのにまことに適した場所、おもしろいわけです。

 これは雨晴海岸の埋立地ですけす。ごらんのとおり、ずっとヒメジョオンの大群落ができております。こっちのほうにはマツヨイグサの群落がちょっと見られます。

 その埋立地で最近増えつつある帰化植物のひとつ、コマツヨイグサです。北米原産で、ちょっと小型のマツヨイグサです。以前には全然見なかったんですけれども、埋め立ててから急激に入り込んできております。

 その次に、帰化植物が入り込むことによって、その地域にどういう影響が出てくるのであろうかという問題です。映像でご覧にいれます。入り込むことによって、そこの、もともとある植生が壊されていくということが心配されるわけです。自然の力の強い場所、いわゆる競争力のある場所には、簡単に入り込めないわけですが、高山帯や亜高山帯、海岸や河川敷、こういったような場所は非常に競争力が弱い場所なんです。ですから、そういうところに入り込むと、大きな植生破壊が起こってきます。これは立山の室堂に入り込んだエゾノギシギシという植物です。ヨーロッパからアジアにかけての原産ですけれども、日本へは北海道、つまり寒いところへ入り込んできた。立山も寒いわけですね。ですから寒いところへ入り込んでも、耐性力がありまして、大繁殖をいたしました。特に室堂平を観光地化するために、大々的に工事が行なわれた。そういうところへ入り込んだわけです。

 大きくなるもんですから、下にある高山植物が小さくなっている。日があたらないという状況が生まれるわけです。

タチオランダゲンゲ
タチオランダゲンゲ

 これはオオアワガエリという外国産の牧草です。横にあるのはハイマツです。ハイマツ帯の中へ入り込んでいる姿です。まさかハイマツが負けるとは思いませんけれども、けっこうたくさんの種を飛ばします。みくりが池のほとりに生えていたものの写真です。それからセイヨウタンポポ。一年中繁殖してもいいくらいの強い力を持っています。これも室堂平で繁殖をしている例です。たくさんの種を作りますので大繁殖をします。これは弥陀ヶ原の例ですけれども、フランスギク。横に生えているのはニッコウキスゲなんですね。こういう高山植物の生えている所へ、でっかい顔をしてフランス人が入っているという姿。ここにはテガタチドリという高山植物が生えている、すぐ近くに入り込むわけです。しかもこのフランスギクも寒さに非常に強いわけです。

 これはタチオランダゲンゲと言います。これもヨーロッパあるいは西アジアの原産ですけれども、弥陀ヶ原の六甲学院の山小屋のあるすぐ前の植生復元のためにむしろを敷いた、どうもそのむしろについてきたらしいんですね。かえって逆効果になって、現在大繁殖しております。根っこでずっとつながっておりますので、全部抜き取るというのはなかなか大変なことになるわけですね。クロバーに非常によく似ておりますが、花の茎だけが立ち上がらないで、花の茎のもとに葉っぱが出たりします。

オオイヌノフグリ
オオイヌノフグリ

 それから在来植物、もともとある植物に置き換わっていくという現象が起こります。こっちのほうはオオイヌノフグリという西アジア原産の植物です。もともとは日本にイヌノフグリという植物がおったんですけれども、環境がおなじなもんだから、これが入りだすとこれがいなくなるということが起こるわけです。セイヨウタンポポがそうです。これが大繁殖をしたために、もともとあった在来のタンポポ、たとえば富山県にはエゾタンポポというのがありますけれども、これが最近はほとんど見なくなった。どこへ行ってもセイヨウタンポポだらけということになる。在来のタンポポをたまに山の中で見つけたりすると、「おおっ」とびっくりするぐらい珍しいんですね。

 それからこれは帰化植物同士なんですけれども、マツヨイグサというのは、非常にきれいですけれども、最近はもう珍しい状況になっている。なぜかと言いますと、後から入り込んできたメマツヨイグサという北米原産の植物が、入り込んできて、雨晴海岸あるいは道路脇に大繁殖をすると、今までいたマツヨイグサがそれに置き換わられてしまっているという現象が起こっております。こういうように、帰化植物によってもとあった植物がなくなっていったというのは、他にもたくさんあるわけです。

 その次に雑草か害草かと書いておきましたけれども、それが入り込んだおかげで田んぼ、畑、路傍、堤防のこういうところの厄介者になっている例があります。栽培植物にとっては、栄養分を吸い上げていくもんですから、農家の人は非常に困っているという例です。こっちのほうはアレチウリというウリですね。これも河川敷であるとか堤防に大繁殖。これも畑地に入り込むと大変なことになります。

イタチハギ
イタチハギ

 それからこっちのほうはイタチハギですが、これは私が20年ほど前に、西田から上った白山林道に、二上山に最初に入り込んだんですけれども、最近は前の御前近くの斜面に大きな群落を作っております。これは既に富士山であるとか、いろんな表日本海側の亜高山帯の道路脇に入り込みまして、そういうところの害草として非常に強いもんですから、これがはびこるとその辺の植生をだめにしてしまい、恐れられております。

 これは、小矢部川堤防のワルナスビというナス科の植物です。痛い棘がありまして、今畑地に入り込むとやっぱり害草化している。高岡古城公園にも生えております。

 これはヒメオドリコソウと言います。よく見られる機会が多いと思います。田んぼのあぜなんかに大繁殖して、ピンク色に染めます。これも畑地の害草です。ヨーロッパ原産です。

オオブタクサ
オオブタクサ

 それから花粉症の原因になるものがたくさんあります。日本ではスギ花粉症というのはいつも春に話題になりますけれども、これは秋の花粉症の最大の原因になっております。こちらブタクサ、それのさらに大型のオオブタクサ。両方とも北米原産です。オオブタクサのほうは、高さがなんと2m半、大きいものは3m近くにもなるんですね。しかもブタクサにも大量の花粉、細かい細かい花粉を飛ばします。これはブタクサの花粉を顕微鏡で映したものです。1コ1コがばらばらで、さらさらしているんですね。大きさが直径大体20ミクロン。非常に小さいですね。風に飛びやすいという性質を持っております。花粉症の原因になるような帰化植物は、他にもいくつも知られております。このオオブタクサは二上山の西側、氷見へ行く国道160号線の脇にもう入り込んでいました。それから小矢部川の河川敷に大繁殖をしております。特に河川敷みたいな明るいところが大好きです。特にこのオオブタクサのほうは、水と関係があるみたいなんで、河川敷には入り込みやすいと考えられます。

 帰化植物による緑化復元ということ。これは二上山の万葉ラインの例です。万葉ラインを作ったときに、法面と言いまして崖になったところがどうしてもできるわけですね。そこの泥がむき出しになりますと、雨が降ったりしますと土砂崩れが起こったりしますので、泥止めのために植物を植えるわけです。一番手っ取り早いのが、外国産の牧草です。これは去年の写真ですけども、まず目に付くのが外国産の牧草のシロツメクサです。おそらく建設業者が種を吹き付けられるんでしょうけども、そういう意味では人間が傷をつけた場所をいち早く緑で覆って傷を治してくれるという非常に素晴らしい働きとして、緑化復元に利用されるわけです。なかには播いたはずのないものが入ってくるんですね。なぜかと言いますと、おそらく外国で種を採集するときに、それだけ純粋に種が採集できるわけではありじゃありませんで、そこに生えている色々なものを、一緒に種を刈り取ってしまうんだろうと思われます。これはホソアオゲイトウという南米の植物です。それから最近、県内でよく見かけるようになったのは、テッポウユリに似ておりますけども、葉っぱがずいぶん細いタカサゴユリ。名前のとおり、台湾原産です。

 次に、二上山観光開発のあゆみと、帰化植物の侵入は、どうも関係ありそうだ。1960年から74年ぐらいの15年間の間に、二上山はずいぶん開発されたわけですね。非常に行きやすくなったわけです。万葉ラインの建設が1960年に始まって、舗装が完成したのがその10年後の1970年です。その間、仏舎利塔、二上霊園、城山の駐車場、二上青少年の家や平和の鐘、あるいは万葉植物園、城山の平和観音像。70年代には林道白山線、城光寺球場、自然休養村などが、周辺部にどんどん開発されました。これは城山の頂上です。こっちが万葉ライン、こっちが平和の鐘の駐車場です。

二上山の航空写真
二上山の航空写真

 これは1960年代の二上山の航空写真です。ご覧のとおり、ここが二上霊園。ここが、城光寺球場。高美町の背後の土砂採掘場であったり、矢田の谷。海老坂峠あたりでも土砂採掘がどんどん行なわれました。ここに二上青少年の家が建設中。この白く長いのは、万葉ラインです。ですから1960年代というのは、こういうふうにして二上山がずいぶん傷ついたわけです。そこへ帰化植物の侵入が、どーんと起こったと考えられます。たとえば、万葉植物園を造成した「前の御前」です。ここが悪王子社です。ここに家持像が建っております。今はここにはございません。ここに茶色く草が生えております。これはシナダレスズメガヤという牧草です。これは万葉ラインの法面に種を播いたんですね。だから、播いたはずのない、こういう荒れたところに、種が飛んできて生えているわけです。これは1975年の写真ですから、もう30年以上たっております。

 これも今から、30年以上も前の写真です。当時の二上山の頂上。今の社と全然違う、木造のがありました。これ、モミノキですね。ここに当時入り込んできた帰化植物が2種類ありました。シロツメクサとヒメムカシヨモギというキクの仲間です。

 これは大師ヶ岳の頂上に入り込んだ帰化植物です。ここに生えているのがヘラオオバコ。もう一種類はシロツメクサが入り込んでおりました。これもおそらく、白山林道から登ってきたんだろうと考えられます。これは1973年から74年の間で入ったんだろうと私は考えております。なぜかと言いますと、1972年、その前年にここへ行った時には、なかったんです。これは1975年の写真ですから、おそらくこの2年間の間に入り込んだんであろうというふうに考えられます。

シナダレスズメガヤ
シナダレスズメガヤ

 これは万葉ラインの法面に播かれたシナダレスズメガヤ。これは77年の写真ですけども、一時これが日本中で、法面に種が播かれました。現在はあまり見ません。なぜかと言いますと、これは泥止めにあまり有効でなかったんですね。播いても土砂の崩壊が起こる。しかももうひとつ悪いことがあるんですね。何かと言うと、秋に枯れるんです。こういうふうな状態になります。ところが、種が播かれなくなってもなおかつその地域には残るんですね。繁殖を続けるわけです。これは昨年の写真ですけれども、ここ、あの、前の御前から下ったところにキャンプ場があります。そのキャンプ場の中にはこういうふうにして、生えています。青少年がテントを張る場所ですね。「え?こんな所に生き残っているな」と思ってびっくりしたんですけども、シナダレスズメガヤが繁殖をしているわけです。ここに繁殖による危険性と書いてあるんですけど、みなさん、何が危険かおわかりでしょうか?…そうです。これは、非常に燃えやすいんです。いわゆる野火。ここでテントを張るからには、ご飯を炊いたりします。あるいはキャンプファイヤー、そういう火災の危険性というのが考えられます。幸いにも今までここではありませんけれども、他の県では、シナダレスズメガヤにドライバーがポイっとタバコの吸殻を捨てたことによって、野火が起きたという報告がございます。やっぱり安心できないわけですね。

 外国産の牧草のなかに、花粉症の原因になるものがあります。さきほどのオオブタクサ、ブタクサと、もうひとつ。三大花粉症の原因でないかと言われている、カモガヤです。これも道路脇にたくさん入り込んでおりますね。それからこっちは最近非常に増えましたね。万葉ラインですけども、オニウシノケグサと言います。カッコして書いてあるのは、牧草名です。カモガヤはオーチャードグラスです。オニウシノケグサはトールフェスク。オニウシノケグサの優れているところは、秋になっても枯れないんです。冬、雪の下でも青々としている。だからこそ牧草として優れているということでもあるんです。

シロツメクサ
シロツメクサ

 それから一緒に入り込んできたものに、シロツメクサとムラサキツメクサ。ホワイトクローバーとレッドクローバー。このレッドクローバー、非常に外国では優秀な牧草です。オランダからの貿易品の中にギヤマンがあり、幕末に入ってきたパッキングとして詰められていたから、ツメクサと名前が付いておるわけです。これは特に花粉症の原因というわけでは決してございません。

 そこで、今日の主要なテーマ、セイタカアワダチソウの話になります。これは万葉ラインの海老坂側の入り口に繁殖して、クズと競争している最中です。セイタカワダチソウとはどういう植物なのかということなんですが、北米原産で、明治の30年ぐらいに入ったんだろうと、牧野富太郎は言っております。高さが2.5mぐらい、長い地下茎を伸ばしまして10月ごろに開花する。一時これが毒草でないかという噂が立ったことがありましたが、毒草ではありません。なぜそんな噂が立ったかと言いますと、地下茎から他感物質と言って、他の植物が嫌がる成分を出しまして、他の植物の生育を抑えるということが、間違って毒草だというふうにして言われたらしいです。しかし、そういうような他感物質を出す植物は、他にもたくさん例がございます。それから戦後になって急に、増えたんです。北米原産ですので、戦後の貿易の増大によって増えました。もうひとつ、増えた理由のひとつに、秋になると蜜源植物がなくなるもんですから、ミツバチを飼う養蜂業者が苗を全国に植えて歩いたんだろうということが報告されております。確かな証拠があるみたいですね。養蜂業者の協会の人もそういうふうな証言をしておるということが、ものの本には書いてあります。ただ、養蜂業者によると、この蜜はいわゆる二流品なんで、はちみつにするよりも花のない時期のハチのえさにする程度なんだということも聞いております。だから、養蜂業者が植えて歩いただけで増えたということは決して言えないわけです。

セイタカアワダチソウの花粉
セイタカアワダチソウの花粉
1982年のセイタカアワダチソウの分布
1982年のセイタカアワダチソウの分布
2006年のセイタカアワダチソウの分布
2006年セイタカアワダチソウの分布
セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウ

 花粉です。さきほど、ブタクサの花粉をお見せしました。比較してみますと大きいんです。大体、長いところが30ミクロン、短いところが25ミクロンありました。おもしろいことに、花粉同士がくっついています。さきほどのブタクサは、ばらばらなんですね。ということは、こちらのほうは風で花粉が飛ぶのではなくて、虫が運ぶんです。こういうくっつきやすい花粉、しかも大きいということは、風で飛びにくいんです。ただ、花粉症の原因になるかならないかということについては、なると言われております。ただし、これはむしろブタクサの濡れ衣なんですね。ですから、確かに抗原抗体反応はあるとしても、特殊な例としか、言いようがないと思います。

 これは二上山全体の地図です。ここが二上山頂上。城山、鉢伏山、大師岳、ここに紅葉谷、ここが雨晴ですね。これは25年前のセイタカアワダチソウの生えている状況です。小矢部川河川敷には、その頃からたくさんあったわけです。そのほか、海老坂近く、それから白山林道に2か所、伏木高校の横に2か所、伏木の市街地に2か所と、城光寺球場に1か所と、まあ、この程度だったんです。これは西田の入り口のところに1か所ありますけども。これは、今から30何年前に撮った写真なんですけれども、既に平地には大繁殖をしていた場所がございます。

 そこでこれが去年の秋の分布地図です。どういう状況かということをご覧いただきたいと思います。先日の富山新聞にちょっと記事が出ましたけども、新聞記者は勝手に「数百倍でないか」と言って、私が「ちょっと、そんなことわからんよ」と言っとったんですけども、書きました。面積にすれば数百倍の感ではない。ちょっと倍数が表せないぐらい、千倍、二千倍、三千倍なのか、正確に測れません。それくらいの繁殖なんですね。白山林道の沿線にずーっと入っております。それから麓の谷間、谷間、谷間、こういうところ。、二上霊園であるとか、城光寺球場、矢田の谷、渋谷沿い、紅葉谷、太田の休耕田、与茂九郎堤、西田、国道160号沿線全部といった状況で、大繁殖をしております。これは伏木、国分の休耕田に入った大繁殖の例です。これは谷間の放棄水田に入った、こっちは矢田の谷、こっちのほうは西田の谷、近くに養鶏場がございます。これは海老坂の谷の様子です。これは太田の、もともと畑地なんですね。ほったらかしになりますと、まずこういったような帰化植物が入り込んできます。

 海岸の砂地にも入り込んでおります。これは国分海岸、こっちのほうは松太枝浜海岸。ここにちょっとした川がありまして、橋がかかっています。ここに生えているんですね。ここは実は、もともと富山県で非常に貴重なハマナスの自生地があった場所です。ハマナスの自生地は、昔はここと、入善か黒部かどっかに1か所。今でこそ、どこにでも植えてありますけれども。自生のものは呉西ではここだけだったんです。ここに遊歩道を作ったおかげで、完全に壊してしまった。なくなった後へ、これが、入り込んできたんです。す。

 これは住宅地。柵をしてありますけども、中に人が入らない代わりに、アメリカ人が入っております。これは高美町の上の万葉台と畑地の境界線ぐらいに入り込んでおります。これは、二上山ではいちばんたくさん生えている場所、いわゆる紅葉谷の産業廃棄物の捨て場の様子です。下のほうで通行止めになっておりますけども、番をしておるおじさんに断って、見せてくれということで、入りました。あちこち見渡す限り、こういうような大繁殖をしています。

 ちょっと前へ説明戻ります。セイタカアワダチソウの他感物質は同じ場所に生えておりますと、他の植物が嫌がらないで、自分本人まで成育しづらい状況になると言われております。そこへ、日本に昔からあるススキ、あるいはクズなどが生育してきて、やがてそこにはセイタカアワダチソウがなくなるという現象が起こるわけです。これは、クズとセイタカワダチソウと喧嘩している最中の風景です。どうもクズのほうがこれから優勢になっていきそうな様子です。ところがこのクズというのがまた厄介者なんですね。杉などの植林地に這い上がりまして、林業やってる人は非常に困っておるわけです。

 最後にもうひとつ。タコノアシという植物が高岡市にございます。これは環境省の絶滅危惧種です。全国的になくなっております。富山県内では高岡市と氷見市だけにある非常に珍しい植物です。一部、庄川の河川敷の下流域にございます。これの最大の敵はセイタカアワダチソウなんです。生えている環境がよく似ているんです。セイタカアワダチソウが入り込んできまして、現在やっとなんとか生きておるという状況になっております。絶滅が心配されます。大事にしたいわけですね。ご覧のとおり、ほんとにゆでダコの足のような、秋になると赤くなる、変わった植物。湿地帯に生えています。

 以上、時間が来たようでございます。急いでしゃべりました。わかりにくところもあったかと思いますが、これで終わりにいたします。

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