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■「古文書からみる二上の歴史」−村御印(むらごいん)を中心に−

仁ヶ竹亮介
(高岡市立博物館学芸員)

■はじめに
○古文書(こもんじょ)とは?
 ある者(差出人)が相手方(受取人)に対し意思や用件など伝えるために作成し、渡した(示した)もの。
  →相手は不特定多数でも、神仏などでも含む。
  →例:書状(書簡)、朱(黒)印状、触書、遺言状、誓詞(誓紙)、高札、絵馬、道標など。紙以外にも木・石・金属・布などに書かれたものも含む。

○「古文書」の分類
・狭義(「古文書学」的)には古記録、著作物は含めない。
 →古記録、著作物をも含めた広義の「古文書」とは、一般名称(俗称)。
・時代により古代・中世・近世・近代・現代文書と分かれている。
 →特に古代(と中世)文書を「古文書」といい、近世文書を「近世古文書」という場合がある。

■近世文書を読むために…
単位のいろいろ1(度・量・衡、面積) 
・度(長さ)→丈、尺、寸、分(ぶ)、厘。10進法。1尺≒30p。
  (里程)→里、町(丁)、間。1里=36町≒4q。1町=60間≒109m。1間=6尺≒182p。
・量(体積)→石・斗・升・合・勺(しゃく)・才・弗(ふつ)。10進法。1升≒1.8?。【1俵=4斗≒60s】
・衡(重さ)→貫(貫目)、匁(文目)、分(ふん)、厘。1貫=1,000匁。以下は10進法。1貫≒3.75s。
・面積→町(ちょう)、反(たん)(段)、畝(せ)、歩(ぶ)(分)。1町=10反=100畝。1畝=30歩。1歩=1坪(6尺四方)。 
    能登・越中では1歩が6尺3寸四方のままで1反=360歩制。 1町歩≒100a≒1万u。

単位のいろいろ2(貨幣)
・金→両、歩(ぶ)(分)、朱。4進法。(1両は現在の約20~30万円)
・銀→貫(〆。貫目)、匁(もんめ)(目)、分(ふん)、厘、毛(もう)。重さと同じ・・・秤量貨幣(重さがそのまま価値)
1貫=1,000匁。以下は10進法。1貫≒3.75s。(1匁は現在の約4~5千円)
・銭(銅)→貫(貫文)、文(もん)。1貫=1,000文。(1文は現在の約40~50円)
金1両=銀50匁=銭4貫文(のちに金1両=銀60匁前後となる)
(・疋、匹)→1疋=銭10文。金100疋=金1歩。金400疋=小判1枚。儀礼時の授受

いろいろなきまりごと
・文字はくずし字(行書、草書)→旧字体(図=圖、転=轉)、異体字(船=舩、松=枩)
・書体は「御家流(おいえりゅう)」→青蓮院門跡、尊円法親王(1298-1356)を祖とする書流。江戸時代には朝廷・幕府・諸藩の公文書類で用いられたほか、寺子屋でも教えられて盛行した。青蓮院流とも。
・平仮名は「変体仮名」
尓=に。奈=な。宇=う。楚=そ。亭=て。能=の。安=あ=阿。者=は=春。留=る=流。毛=も=茂。
・返り字→有(在)、無、不、可(べき)、被(られ)、奉(たてまつる)、就(つく)(ついて)、為(たる)(ため、せ、させ、として)、令(せしむ)、於(おいて)、乍(ながら)、難(がたき)、致(いたす)…など。
・候文(です、ます)
1.【丁寧語】有之(これあり)候。可相成(あいなるべく)候間(あいだ)。奉願上(ねがいあげたてまつり)候得共(そうらえども)。
2.【謙譲語】御座(ござ)候。申上(もうしあげ)候。致間敷(いたすまじく)候。致度存(いたしぞんじたく)候。乍恐(おそれながら)。
3.【尊敬語】可被成下(なしくださるべく)候(そうら)はば。


○弘化3年(1846) 射水郡城光寺村新開仮証文(二上山郷土資料館所蔵)

・「新開仮証文」とは?
 村からの新開願に対し、改作奉行の審査、許可を経て交付される。但し条件があり、年限内に開発できれば、検地の上、「本証文」が交付されるが、出来なければ全て取り上げとなった。
 しかし、幕末になると、実際には本証文は交付されず、この仮証文がその機能を果した。今日、村方に仮証文が残っているのはそのためである。加賀藩内で書式が統一されていた。
・弘化3年(1846)11月、期限7年を設けて5石程新開予定。
・9人の改作奉行より城光寺村当分肝煎一ノ宮村与左衛門 ほか5名へ宛てられている。

■御印(むら村ごいん)とは・・・?
・前田家領(富山・石川両県)全村に配布された「年貢割付 (徴収令)状」。
・前田利常(1592〜1658)が隠居後の晩年に実施した、農政改革「改作法(1651〜56)」の成就の結果交付された(利常の「満」印)→宛名は「…村百姓中」→村請制:一村の連帯責任。
・慶安2年(1650)、明暦2年(1656)に続いて、内容を改訂して(「新京升」を採用したので)寛文10年(1670)9月7日に交付→現存するほとんどのものはこの日付。
・各村の草高(全収穫量)、免(免相とも。年貢率)、小物成(雑税)、夫銀(強制労働代銀)・口米(代官への手数料)が記載。
→改作法のねらいは年貢高を定額(定免法)にして、豊凶を問わず一定の収入を期待。

寛文10年(1670) 越中射水郡二上村 村御印(二上射水神社蔵)


○定納高730.78石=(草高)1198石×0.61(免)。○夫銀36.54石=(銀140目の米相当)5石×(730.78÷100)
○口米81.85石=730.78×0.112。○小物成合計67匁 (約2.39石に相当)
☆合計で約851.56石となり、実質の免は約71%となる。

寛文10年(1670) 越中射水郡城光寺村 村御印(二上山郷土資料館蔵)


○定納高139.69石=(草高)229石×0.61(免)。○夫銀6.98石=(銀140目の米相当)5石×(139.69÷100)
○口米15.65石=139.69×0.112。○小物成合計172匁 (約6.14石に相当)
☆合計で約168.46石となり、実質の免は約74%となる。

寛文10年(1670) 越中射水郡古府村 村御印(小谷秀範氏蔵、伏木北前船資料館に展示)


○定納高97.35石=(草高)165石×0.59(免)。○夫銀約4.87石=(銀140目の米相当)5石×(97.35÷100)
○口米約10.9石=97.35×0.112。○小物成合計189匁 (約6.75石に相当)
☆合計で約119.87石となり、実質の免は約73%となる。



ま と め 1 −村御印からみる二上山周辺村々の特徴(草高)−
草高
○太田村1,630石(高岡市全域168ヶ村中4位)に次いで二上村1,198石(同10位)が高い。
○ 小矢部川右岸と比べ、左岸は小規模村が多い(平均草高約336.2石)。
      →特にその左岸北部の二上山周辺村々の平均草高(約307.5石)低い。


ま と め 2 −村御印からみる二上山周辺村々の特徴(免)−

○ 免は逆に右岸が低く(一村平均免41%)、左岸が58%と高い。
左岸地区42ヶ村のうち24ヶ村が60%以上、12ヶ村が50%以上。左岸南部が特に高い。



ま と め 3 −村御印からみる二上山周辺村々の特徴(小物成)−
小物成
○ 高岡市域(168ヶ村)で小物成があるのは111ヶ村(66%)。
○ 小矢部川右岸の約61%(77/126村)に対し、左岸は約81% (34/42村)に小物成がある。
    →山、川からの副収入が多い。


おわりに
「村御印」というたった1枚の古文書から草高、免、小物成など様々な村のデータが分かる。
→それらをまとめ統計をとる               
→傾向や特徴が分かる                 
→絵図など他の史料とも比較検討       
→様々な「歴史」の一側面が更に立体的に見えてくる。

古文書の魅力                     
→古文書は歴史の貴重な「証言者」!!!
→古文書は難しい→読めた時の楽しみ